Microsoft Word での入稿について
Microsoft Wordでのチェックポイント一覧
当方では、Wordから直接プリンタにデータを送ってプリントするように出力するのではなく、PostScript出力環境に対応した PostScript系のファイルに変換したうえで出力します。そのため、その環境に適合するよう、いくつかの変更を加えたうえでデータ出力しなければなりません。再現が難しいものもありますし、注意が必要なこともあります。以下のチェックポイントをご確認のうえ、入稿してください。
チェックポイント
Word のバージョンの確認、アップデートの実行
Wordのバージョンをお知らせください。できるだけ同一バージョンで開いて、同一再現環境で出力ファイルを作成するためです。また、更新をチェックし、そのバージョンの最新の状態へアップデートしておいてください。それによって、ソフトウェアがもつバグやセキュリティ上の欠陥が解決される場合があります。(下図はWord 2003の例)
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必ず仕上がり見本を添付してください
入稿されたデータが正しく当方の環境で再現されているか確認するために、仕上がり見本を必ず添付して入稿してください。Web入稿の場合は、データの内容が細かく確認できる画像データ(JPEG等)やPDF等を添付してください。プリントプレビュー画面のキャプチャでもかまいませんが、文字や図形等の確認が細かくできるものが必要です。メディア入稿の場合には、データをプリントアウトしたものを同送してください。
頁物・小冊子の場合には、入稿表兼台割表等仕上がりがイメージできるものも添付してください。メディア入稿の場合には、プリントアウトで製本見本を作っていただくと分かりやすくなります。
なお、プリントサイズを仕上がりサイズとするのではなく、実際の仕上がりサイズでデータも作成するようにしてください。当方での出力の基準はデータであるためです。
使用しているフォントを確認ください
使用しているフォントが当方にない場合、別のフォントで置き換えて出力されることになります。Windows付属のフォント、Office付属のフォント、当方所有のTrueTypeフォント、オープンタイプフォント等以外が使われている場合、他の書体に置換して出力します。はがき作成アプリケーションなどをインストールしたとき同時にインストールされるフォントもあります。それらすべてには対応しかねますので、充分使用フォントを意識してデータ作成してください。
OfficeにはTrueTypeフォントを埋め込む設定もありますので、下図をご確認ください。(ただし、当方(別の環境)では編集不可ファイルとなります。)
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「名前を付けて保存」→「ツール」メニュー →「保存オプション」を開き「TrueTypeフォントを埋め込む」にチェックを入れて保存します。
フォントのボールド指定の処理
フォントにボールドが指定してある場合、PostScriptでは、文字を少しずつずらして複数重ねることで太らせるか、文字のアウトラインにそって線幅を入れることで、太く見せる処理を行います。文字の大きさや、フォントの種類によってはつぶれる場合があります。これを避けるためには、同一フォントファミリー内で太い文字を指定すか、太めの別フォントを指定するなどして対処してください。
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文字のアウトラインにそって線幅をもった文字が 重なって太く見せている。 |
プリンタ環境の違いによる体裁のくずれ
Officeアプリケーションは使用プリンタドライバの違いによって大きく影響をうけるという性格をもっています。当方で開いたときにレイアウトのくずれがおきていた場合、レイアウトを維持するためにマージンなどの調整を若干おこなう場合があります。それでも文字の位置ズレ、改行位置のズレなどがおこる場合があります。
以下レイアウトを崩さないための基本設定です。ご確認ください。(Word 2003の画面)
「ツール」→「オプション」→「互換性」
「文書をレイアウトするときにプリンタの設定に従う」のチェックをはずす。
同じく「オプション」の「印刷」で「基本の用紙サイズ(A4/レター)に合わせて自動調整する」のチェックをはずす。
各プリンタのプロパティの「ディバイスの設定」→「フォントの代替表」で、すべてのフォントを「Don't Substitute」にして、フォントの置き換えが起きないようにする。
Adobe PDF の作成についてもプリンタの一種として、この設定を行っておいてください。
カラースペース変換により色再現に差がでます
Officeアプリケーションは、モニターと同じくRGBというレッド・グリーン・ブルー三原色にもとづく色空間でデータが作成されます。カラー印刷では、CMYK(シアン・マゼンタ・イエロー・ブラック)という4色のインキの掛け合わせで色を再現する方式が採られています。印刷では、RGBのデータはCMYKに変換されなければなりません。この変換によって色味の違い、鮮やかさの違いが少なからず起きます。この点については、あらかじめご了解ください。
塗り足しが必要な場合
オフセット印刷では、印刷後に仕上がりサイズに断裁します。仕上がり線まで色や画像がくる場合には「塗り足し」が必要になります。「塗り足し」がないと、印刷後の断裁時にわずかなズレが生じ、紙色の白い部分がわずかに残ってしまうことがあります。通常3mmの幅で色や画像の断ち落とし部分である「塗り足し」を作っておきます。
Wordはドキュメントサイズ外に色を入れたり写真を配置したりすることはできませんので、あらかじめ天地左右3mmをプラスしたドキュメントサイズでデータを作っていただく必要があります。A4サイズ等規格サイズのまま(塗り足し無し)で、端に接する状態で色や画像が配置してある場合、当方では仕方なく若干拡大して強制的に塗り足し部分を作って出力しなければならなくなります。これを避けるためにも、塗り足しが必要な場合には、作成当初に正しく寸法設定してデータ作成にとりかかってください。
また、ノンブル等の文字や画像が端に近く配置されている場合、断裁時に切り落としてしまう危険も発生します。通常3mm以上のマージンをとって配置するようにします。頁物の場合断裁の誤差はさらに大きくなりますので、マージンをさらに大きくとっていただく必要があります。
「ページ設定」で、A4規格に6mmをプラスした寸法にしてデータ作成する。
正しく処理できない効果等があります
Officeには簡単に特殊な効果を施すことができる機能がいくつか用意されています。それらはPostScriptにおいては正しく処理できないものもあります。使用しないかリスクを念頭において使用ください。
半透明・透過性の設定
PostScriptにはもともと透明という概念はありません。Wordで半透明や透過性が設定されていると、PostScriptでは擬似的に透過状態を再現しようとします。下図のように、色に透過性を設定した場合には、小さなビットマップのパターンを敷いた状態で再現されます。希望する状態とはほど遠いこともありますが、処理が重くなるため出力エラーになる可能性もあります。淡い色は透過性の設定ではなく「色の設定」で色を指定して着色するようにしてください。
透過性の設定(使用しないことをおすすめします)
PostScriptでの再現

ワードアート・3D効果・Smart Art
簡単に立体などの特殊効果がつくれるワードアートや3D効果は、タイトル部分などによく使われています。しかし、PostScriptに変換されたとき正しく再現されない場合もあります。文字の抜けるべきところが抜けていなかったり、陰の部分がくずれていたり、再現されないこともあります。これらはその再現に不確かなこともあって、当方では印刷物での使用はおすすめしていません。
ワードアートがくずれている例
パターン塗り
パターンは画面表示と出力結果が一致しません。意図したものと違ったパターンの細かさで印刷される場合がありますので、その旨了解のうえでお使いください。
画面で表示拡大率を変えた時の「パターン」の表示例
配置画像の解像度について
配置画像の解像度は配置サイズで300dpi 程度以上になるようにしてください。Webページで使用されている画像、OfficeのクリップアートのうちGIFやJPEGのもの(WMF形式はパスオブジェクトです)などは印刷用途に向かないものです。解像度不足だと、ぼやけて印刷されたり、写真のピクセルが見えるような状態で印刷されたりします。強制的に解像度を高めても画質は良くはなりません。 また、デジカメで撮影されたもの、スキャナで取り込まれたものであっても、その画像が色調・明度等問題があったとしても、当方でそれを調整する作業は行いませんので、画像は最適なものを選ぶか、調整するなどして配置してください。 なお、リンク配置された画像の場合は、元画像も送っていただく必要がありますので、ご注意下さい。
PDFで入稿する場合
PDFは様々な用途に活用されており、その用途によって作り方も変える必要があります。Web用、画面表示用、一般プリント用、高解像度印刷用など色々です。一旦画面表示用など低解像度で作られたPDFは、印刷用途のPDFには使えません。
また、PDF作成には市販の様々なソフトやMicrosoftが提供するアドイン等も存在しますが、本家アドビシステムズのAdobe Acrobat(無償のAdobe Readerとは別物です)をぜひ利用していただくようおねがいします。
以下、Acrobatがインストールされた環境での作成法の説明です。
「印刷」から作成する
Word 2003+Adobe Acrobat 6 の組合せの場合とWord 2007 +Adobe Acrobat 8 の組合せの場合で説明します。
Word 2003 +Adobe Acrobat 6 の組合せの場合
「ファイル」→「印刷」を開きます。
「プリンタ名」に「Adobe PDF」を選びます。
「プロパティ」をクリックして開きます。

「PDF設定」に「Press Quality」を選びます。
「フォントを送信しない」のチェックをはずします。
塗り足しのあるデータで3mmずつサイズを大きくして作成している場合には、ページサイズの「カスタムページの追加」をクリックして、カスタムサイズを作る必要があります。
「OK」をクリックして閉じます。
以降は通常のプリントと同じです。
Word 2007 +Adobe Acrobat 8 の組合せの場合
「Officeボタン」から「印刷」を開く
上の「Officeボタン」から「印刷」→「印刷」を開きます。
「印刷」ダイアログ
「プリンタ名」に「Adobe PDF」を選び、「プロパティ」をクリックします。
「Adobe PDF のドキュメントのプロパティ」の「Adobe PDF 設定」
「PDF 設定」に「PDF/X-1a:2001(日本)」または「プレス品質」を選びます。
塗り足しのあるデータで3mmずつサイズを大きくして作成している場合には、ページサイズの「追加」をクリックして、カスタムサイズを作る必要があります。
以降は通常のプリントと同じです。
PDFMaker で作成する
Acrobat をインストールすると、同時に「PDFMaker」というOfficeのアドインがインストールされます。これによって、より簡単にPDFが作成できるようになっています。 これも、Word 2003 +Adobe Acrobat 6 の組合せの場合と Word 2007 +Adobe Acrobat 8 の組合せの場合で説明します。
Word 2003 +Adobe Acrobat 6 の組合せの場合
「Adobe PDF」メニュー![]() |
「Adobe PDF」メニューから 「変換設定の変更」を開きます。 |
「Acrobat PDFMake」ダイアログ
「設定」タブの「PDF 設定」で「Press Quality」を選びます。他は上図の通りです。
「OK」をクリックします。
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ツールバーに表示される PDFMaker のPDF作成ボタン、または「Adobe PDF」メニューの 「Adobe PDF への変換」で PDF を作成できます。 |
Word 2007 +Adobe Acrobat 8 の組合せの場合
「Acrobat」メニューの「環境設定」
「Acrobat」メニューの「環境設定」を開きます。
「Acrobat PDFMaker」ダイアログ
「Acrobat PDFMaker」ダイアログの「設定」タブの「PDF 設定」で「PDF/X-1a:2001(日本)」または「プレス品質」を選びます。その他の設定は上図のとおりです。設定が終わったら「OK」をクリックして閉じておきます。
「Acrobat」メニューの「PDFの作成」
「Acrobat」メニューの「PDFの作成」をクリックしてPDFを作成します。
PDF作成ジョブオプション
上記作成手順は Adobe Acrobat 6 と Adobe Acrobat 8 の場合でしたが、その他のバージョンを含めた推奨ジョブオプションは以下の通りです。これらはいずれもフォントを全て埋め込む設定であり、埋め込めないフォントが使われていた場合、PDF作成はエラーとなり、PDFは作成できません。
Acrobatのバージョン | 推奨ジョブオプション |
Adobe Acrobat 5.0 | 「Press」 |
Adobe Acrobat 6.0 | 「Press Quality」 |
Adobe Acrobat 7.0 | 「PDF/X-1a:2001(日本)」または「プレス品質」 |
Adobe Acrobat 8.0 | 「PDF/X-1a:2001(日本)」または「プレス品質」 |
Acrobat で作成したPDFのチェック
以下は、Acrobat 8.0 によるPDFのチェック法です。
プリフライト
「アドバンスト」→「プリフライト」または「アドバンスト」→「印刷工程」→「プリフライト」
ここには多くの機能がありますが、以下については行っておいてください。
プロファイルのうちの「PDF/X-1a :2001への準拠を確認」を選択して「実行」ボタンをクリックしてください。(その他は必要に応じてチェックしてください。また、新たなプロファイルを作ってチェックすることも可能ですが、ここでは説明しません。)
このバージョンには「フィックスアップ」という機能が追加されています。これは可能な場合直接問題箇所を修正できるもので、上図のレンチアイコンは対応するフィックスアップがすでに存在することを示しています。なお、独自のプリフライトプロファイル、フィックスアップをつくることも出来ます。

適合した場合、上図のように「問題は検出されませんでした」と表示されます。
問題があった場合、「選択したページオブジェクトをスナップビューで表示」にチェックを入れておくと、その問題箇所を表示させることができます。
なお、PDF/X-1aのジョブオプションで作成したPDFであっても、ここで不適合表示が出ないとは限りません。その場合は出力上問題はないと思われます。
上記のほか「印刷工程」には様々な機能がそろっていますので、必要に応じ活用してください。
また、「ファイル」→「プロパティ」→「フォント」で、フォントが正しく埋め込まれているかなどをご確認いただくことも必要です。「埋め込みサブセット」とあるのが、埋め込まれているフォントです。
「概要」タブもチェックしておいてください。
上は、PDFMakerで作成した場合の表示例です。
「印刷」を通して作成したPDFは、赤枠部分が下図のようになります。
アプリケーションが上のようにPostScriptプリンタドライバを表示しています。